May 18, 2009
ホンファルウル時に積極的に出会いを求めて活動しよう
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1978年生まれのアナログシンセサイザー「KORG MS-20」をiPadアプリ化した「KORG iMS-20」。このほどバージョンアップを果たし、CoreMIDIへの対応でMIDI機器との連携が容易になった。iMS-20の開発経緯やその他の機能について、コルグと開発協力に当たったDETUNEの開発者に聞いてみた。
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出席者は、前述のコルグ 企画の佐藤隆弘氏、開発の福田大徳氏、中島啓氏、そして、DETUNEの岡宮道生社長、佐野信義開発本部長。
DETUNEとコルグが組むのは今月3日に発売されたニンテンドーDS用ソフト「KORG M01」に次いで2製品目だが、DETUNEの岡宮、佐野、光田康典の3氏はニンテンドーDS用ソフトの「KORG DS-10」を別会社で企画、コルグと協業していた経緯がある。まずはプロジェクトが始まったきっかけを聞いた。
●「DS-10プロフェッショナル版」構想
松尾:iMS-20の企画はそもそもどう始まったんですか?
佐藤:なんとなしに話をしてて(笑)。
岡宮:もともとKORG DS-10をやった後、iPhoneで、あの流れでやろうという話はありました。それからいろんなアイデアが出たんですが、いまはそれは難しいかなという話になって。iPadが出た時点で佐藤さんから話があって、じゃあiPadでと。佐野は昔からDS-10のプロフェッショナル版があるといいよね、という話をしてたんですよ。
佐藤:その話でつながってやることになったんですよ。
松尾:そのDS-10プロフェッショナル版という構想がもともとあった……。
佐野:あったらおもしろいね、というだけで、直結したというわけではないです。
松尾:DS-10 PLUSとの関係は?
佐野:それはないです。あれはDSiで作りたい、というところからなので。
松尾:佐藤さんから話があったのは、iELECTRIBEの前あたりですか?
佐藤:会っては「こういうふうにしたい」「ああいうふうにしたい」とか話をして、それをだんだんまとめていって、という感じです。
松尾:iELECTRIBEとiMS-20は並行して進められていた?
佐藤:商品の企画自体は並行して進めていました。iELECTRIBEのほうが先ですが、当時からMS-20をターゲットにしたいと思っていました。
松尾:KORG Legacy Collectionに既にあったから?
佐藤:背景的にはそれもありますけど、MS-20、かっこいいじゃないですか。単純に(笑)。
松尾:それはDS-10のときにも言ってましたよね、佐野さん。
佐野:MS-20は買えなかったんですよ、その頃(笑)。
*「もちろんぼくもMS-20がほしかったんですけど、お金がなくて、お年玉が足りなくて、(MS-10の)中古を2万円で買いました」
佐藤:ぼくはMS-20オーナーなんですよ。買ったのは80年代の終わりくらいですね。デジタル全盛のころですね(笑)。
松尾:DS-10プロと、MS-20をiPadに持っていきたいというお互いの気持ちが一致してビジネスでやろうということになったのはいつごろですか?
佐藤:なんとはなくですね(笑)。こっからビジネスでってところはなくて。
岡宮:なんか、面白そうだからってことで。
松尾:そのころ会社としてのDETUNEはあったんですか?
岡宮:会社としてのDETUNEができてから、というのはありますけど、前の会社(AQインタクティブ)でDS-10をやっていたときから話はしていました。
佐野:飲むたびにでてくる話ですよね(笑)。
※KORG DS-10の企画も似たような始まり方をしている「もとは飲み屋のバカ話なんですよ」
岡宮:どこまでが妄想で構想でというのがわかんない(笑)。
佐藤:それを形にできるかどうかっていう、そこだけですね。
佐野:もちろんDS-10プロだってことを言っていたころは、iPadも出てなかった。iPhoneでっていう話もあったにはあったんですけど、やっぱりちっちゃいな、みたいな。で、けっきょくあまり盛り上がらず。実際に動き出したのはDETUNE設立後ですね。時期的には。
佐藤:そういう話をゴールデンウィークを使って初めてまとめたのがこの企画書です。それまでは手書きでぐちゃぐちゃなやつでしたけど。ここでDETUNEさんとやる合意ができたんで、福田を呼んで、こういうのをやりたいんだけど、と。福田はおぼろげながら分かってはいたんですけど。KORG Legacy CollectionのMS-20を移植したらどのくらいパワーを食うのかとか、試算を始めてもらいました。
●「指って太いね」
松尾:佐野さん、iPhone用にゲームを作ったりしてたじゃないですか。
※BQLSI STAR LASER
佐野:あー。あれは思ったより売れなかったですねー(笑)。
松尾:あれはテストで、そのあとすぐに何か楽器アプリが出てくるんじゃないかと期待してたんですが。
佐野:プラットフォームとしてのiPhoneにはものすごく興味があったし。でもシンセを作るとなると、どうしようと。指って太いね、という話になって。
松尾:DS-10はスタイラスペンを使ってすごく細かいコントロールができますよね。
佐野:そうそう。最初はあのノリでiPhoneにすぐスッと入るかなと思ったんですよね。でも想像してみると大変ですし。いくつかでてきたシンセを見てもやはりピンとこないんですよ。インタフェースのところで。これはあんまり、「じゃあ作ろう」ってならないなあ、というところでしたね。飲み屋レベルの話では。
松尾:ピンと来ない。たしかに。
佐野:言われりゃ作れるのかもしれないけど。でもそれはDETUNE的じゃないんですよ。
松尾:あの時点のiPhoneで作るとDS-10のサブセットみたいになったかも。
佐野:そういう議論はどうしても出ますね。がんばって作っても「けっきょくDS-10じゃん」みたいな。そうするとあれだなってことで立ち消えちゃう。
松尾:そこでiMS-20とDS-10は何が違うのってところですが……。
佐野:そうですね。禅問答みたいになって恐縮なんですけど、プラットフォームが違うと。プラットフォームが違うと、プラットフォームを前提として仕様を詰めていくんで、確実に個性というか特徴が出てくる。そこが大きな違いですよね。
松尾:コルグとDETUNEの役割はどんな分担だったんですか?
岡宮:DS-10のときにはぼくらが主体で、どちらかというとコルグさんにはアドバイスしていただいたり、技術的に協力していただいたり、という感じなんですけど、iMS-20は逆にコルグさん主体で作られて、ぼくらは「いいな、いいな」と言う、そんな感じでしたので、そこはKORGさんからご説明いただきたいところですが……。
佐藤:DETUNEさんにやってもらったのは、デモ曲やテンプレート等のiMS-20の色づけですね。製品の仕様やコンセプトの部分はいろいろアドバイスをいただいて協議して決めていく、という感じ。
佐野:「いやー、いいすねー!」「すげー!マニアックー!」「ありえねー!」みたいなことをずーっと(笑)。あおりましたね。実際すごいな、と思ったんで。自分でやったらここまでいかないな、という、いい距離感で。一コルグファンとして(笑)。
松尾:自分で開発するとしたら……。
佐野:こんなのこわくて、とても作れませんね(笑)。パッと見の起動画面はグロ画像ですからね。知らない人から見たら。そこがいいと思ったんで。開発者はちょっと弱気になるときもあるじゃないですか。そういうときは「いやいや、それはきっといいと思いますよ」と。SQ-10が入るって話を聞いたときには小躍りですよ(笑)。内心では「俺だったら絶対に言えねーな、逆に」みたいな。これは絶対このままで行きましょう!と。そういう役回りですね。
松尾:佐野さんはコンセプターとして参加ということになってますね。
佐野:DS-10の基本的な思想が遺伝子レベルで入っているという意味合いでとらえていただければ。こうしろ、ああしろ、というのではなくて、「まーた、できてきましたねー!」とかそういう役回りですね。
松尾:いいところをほめていく。
佐野:ぼくはちゃんとした営業の人じゃないんで、なんでもほめられないんですよ。顔に出ちゃうんで。好きじゃないとしゃべれなくなっちゃうんですよ。今回はそれだったらどうしようと思ってたんですよ。
松尾:でも今回は。
佐野:強烈に自慢できると思いましたね。「すごいしょ!これ!!!」って。
●本気で取り組んでいる
松尾:iMS-20はパワー的にiPadのどのくらいを使ってるんですか?
佐藤:もうこれが限界です(笑)
中島:けっこうがんばったんですよ(笑)
松尾:人の欲望には限界がなくて……。ベースを別トラックでほしいよね、とか。どこでパワーを取られてるんですか?
福田::MS-20のシンセ部分ですね。パッチングとかじゃなくて、全体。ここが重い、とかではなく。これだけの複雑なモジュールの計算が入っていくので、アベレージで必要という感じです。この1音だけでCPUのかなりのパワーを使っているんですよ。ただそこはMS-20である以上、どうしても譲れなかったので。
松尾:DS-10やDS-10 PLUSでは最高4トラックまでできるのに、という意見については?
佐藤:実現できたらよかったんですけどね。
松尾:それでは中島さん、苦労した部分を。
中島:モジュール毎にコードの最適化を施したところでしょうか。
佐藤:めげそうになってたところに、「絶対に完全再現でお願いします」と言って(笑)
佐野:やる前にはなんとなくいけると思ってました?
中島:最初に動かしたときがあったんですけど、ヤバイな、と思いましたね(笑)
佐野:動かす前はまあまあいけるだろう、と。
佐藤:この段階では福田君、「行けると思いますよ」と。
中島:1音鳴らしたら、これはやばい、となって(笑)
佐藤:そこから再スタートですよ。
松尾:ドラムトラックをサンプリングで6トラックというのはそれを補完する意味で?
佐藤:いや、ドラムトラックはもともと10トラックにしようとしてましたから。
松尾:ほんとだ。10って書いてある……。
佐藤:今の仕様はiPadにおけるマキシマムに挑戦した結果なんです。
佐野:ぼくも最初にiMS-20を見たときは感じましたよね。あ、本気で取り組んでいるんだな、って(笑)。同時にその突き放した感じもなくならないでほしいと思いましたね。立ち上げた瞬間に、「ああ、よくできてる」という印象ではない。なにしていいかわかんない、みたいな。そう思わせない凄みがなくならなければいいな、と思ったんですが、それがどんどん増えてった(笑)。
●伝説的アナログ・ステップ・シーケンサーSQ-10を組み込む
松尾:SQ-10の話にいきましょうか。これの言い出しっぺは?
佐藤:福田君ですね。「シーケンサーどうしようか…?」って言ったら、「実はあるんですよ」って言って、いっしょに昼飯を食いに。
福田:2台は難しいということが分かって、ここにキーとなる面白いものを入れたいな、と考えていたんです。そこでSQ-10をと。すんなりMS-20が複数台動いていたら、SQ-10はなかったかもしれませんよね。
佐藤:マニュアルをダウンロードして。これはすごいって。
福田:実際に使ってみると、かなり難しいんですよね。そこで、当時のSQ-10でできることはそのまま残しつつも、プラスαでいろんな人が操作できる仕様に落とし込むことにしました。
松尾:ステップ数が12から16に変わってますけど、一番変わったところは?
福田:チャンネルセットという概念を入れたところですかね。ボルテージだけじゃなくて。ノートだとノートをいじらせるとか、より直感的にいじれるようにしました。
佐藤:つながなくてもシーケンスが鳴るというのも大きいんじゃないですかね。
福田:もともとSQ-10はマルチプルトリガーアウトからMS-20のトリガーインに入れるのが一般的なセッティングなんですけど、まずこれに気づくかどうか。場合によってはそれに気づかず終わってしまうという(笑)。だからここはかなり議論がありましたね。
松尾:やさしくしちゃっていいものか。
福田:はい。あと、マルチプルトリガーアウトの位置が左側なので、左上から右下につなぐと、常にケーブルがカットオフフリーケンシーのノブの上にかぶってるんですよ(笑)ただ、マルチプルトリガーアウトは左側に配置したくて。そういったUI都合もあったりして、最終的には内部結線するということにしました。
松尾:最初の画面では出てこなくて、パネルをドラッグしないとSQ-10は出てきませんよね。
佐藤:チラ見せしています(笑)
福田:徐々にたどっていって、先に何かがあるという感覚がいいですよね。そこにいくとぜんぜん違うものが出てきてなんじゃこりゃーと(笑)。こういう驚きが何重にもかさなっているのがおもしろいですね。
松尾:SQ-10は実際に使っていたんですか?
佐藤:見たことはあったけど、使ったことはなかった。
福田:そういう意味では新鮮でしたね。アナログシーケンサーというのはこういうものだったんだって。
佐藤:松尾さんは?
松尾:いやー、触ったことないですよ。32年を経てやっと触れたという。
佐藤:そういう人多いですよね。
松尾:MS-20までは買うけど。あと、VC-10とかもほしかったですけどね。MS-50とかも。
佐野:松前(公高)さんのライブで見せてもらったんですけど、いいたたずまいで。
松尾:鍵盤がない!
佐野:いいですねー(笑)。
福田:メーターがまたいいですね。
松尾:iMS-20のマニュアルをよく読めばMS-50が追加モジュールとしてアプリ内課金で用意されているとか期待してました。
※MS-50はMS-20から鍵盤部分を外して拡張性を高めた別売のアナログシンセサイザー。MS-20、SQ-10と同時期に発売された。
佐野:おー、これはぼくも知らない仕様ですね。ありかもしれませんよ(笑)。すべてのパラメータにタッチすると、みたいな(笑)。
松尾:まあ、パワーは使い切ってるということなんで(笑)
●KAOSS PADが2つある理由
松尾:KAOSS PADが2発あるじゃないですか。これがすごくいいんですよね。
福田:もともとDS-10についていましたので。2個にしようというのは、どちらかというとUI都合ですね。1個だとさびしいな、と思って(笑)。画面に適したサイズで配置したら自然にそうなったということですね。
松尾:マルチタッチなんで、左手でグリグリしながらスケールをいじったりできる。キーも選べるし、トーンもいじれる。
佐野:いまだにDS-10の感覚が強いんで、いまだにシングルタッチで使ってしまう。シンセ画面で鍵盤出しつつツマミを動かす、というのは昔の印象が残っているんでやれるんですけど。ちょっとまだ慣れてないですね。
松尾:佐野さんでも。
佐野:いつのまにかやってるんですよ。イカンイカン、と(笑)
岡宮:でもライブ映えしそうですよね。
松尾:右のピッチとゲートというのは決め打ちですよね。
福田:それは最初からそうしようと思ってました。
中島:ゲートとピッチというのはどんなときでも重要だと思われるので決め打ちで。もう1つはアサインできるようにしようと。
●UIへのこだわり
松尾:iELECTRIBEのときもそうでしたけど、UIへのこだわりってのは今回もありそうですね。パラメータをコントロールする方法としてロータリー(つまみのように回す)とリニア(上下方向に動かす)の両方があったりとか。
佐藤:今回、リニアにはかなりこだわりを持ってるんですよ。センスもつけたんですよ。
松尾:センスとは?
佐藤:リニアにしたとき、指の移動距離とパラメータの可変幅の相関を変えられるんですよ。ここは佐野さんのこだわりで。
佐野:ぼくだけでしたね、リニアが好きなのは。みなさんロータリー、ロータリーって(笑)
佐藤:開発中のときはセンスが10段階あったんです。
福田:10段階つけてて、誰がどのくらい使っているかを統計とって。
佐藤:その統計を取った、選抜の4段階ですよ。リニアでもかなりいい感じで使えると思います。それに応じて、ツールチップの場所も変えられるというこだわりも。
松尾:ところで、SQ-10部分はどうやって操作していったらいいんですかね? 1個1個つまみをいじるというのも大変でしょうし。なんか効率的でおもしろい技とかないですかね?
福田:アナログシーケンサーですから、という感じで。
佐藤:簡単にやろうとするなら、鍵盤で入れるか、KAOSS PADで録音するか。
福田:それを後で微調整するとか。
松尾:ピアノロールでお願いします、という人もいるようですが、がんとしてはねのける?
佐藤:はい(笑)。だって、ここにピアノロールが入ってたら世界観が崩れちゃうじゃないですか。
中島:できてくる音が変わってくると思うんですね。アナログシーケンサーですし、送りのモードとかもありますし、偶発的に生まれてくるものがピアノロールより多いかな。送り方を変えるだけでも自分が作ったものと違うパターンが生まれてくるので。例えば奇数・偶数とかだけでも、自分が意図したものと違うシーケンスになるわけですよ。そのへんもいいところだと思います。
※送りのモード:シーケンスを流す順番を変更するためのオプション「SEQUENCE MODE」が6種類用意されている。
福田:シンセのパラメータの一部みたいな感覚があるんですよね。
中島:MS-20とSQ-10、2台で1台みたいな。
佐野:ローランドでTB-303てあったじゃないですか。あれじゃないと出てこないフレーズってあるんですよね。あれの打ち込みを面倒くさい、という人は、あれじゃないとできないフレーズがあるというのに理解を示さない。今回もアナログシーケンサーじゃないとできないフレーズってのはやはりあるんですよ。最初から作ろうとすると。iMS-20で作ったフレーズをそのままDAWでコピーしようとすると、それは当然できるんですけど、最初にそのフレーズがでてくるか、というと、出てこないんですね。そのおもしろさ。「インタフェースで音楽が変わる」みたいな。そこは感じてほしいですね。「うわー、鬱陶しいな、1個ずつやんなくちゃいけないんだ、もういいや、あとは適当で」みたいなところから新しいフレーズが(笑)。
松尾:それをランダムに変えてみたりとか。
佐野:あとはポリリズムみたいなこともしやすいんで。ドラムのトラックを全部ポリリズムで走らせたりとかもできるんで。普通のシーケンサーじゃ、なかなかそういうことをやろうと思わないじゃないですか。
●パッチング
松尾:iMS-20のパッチは変ですよね。1カ所からたくさんのケーブルが出てくるという。実機ではできないようなことができる。
佐藤:福田がパッチにはまってしまい、なんにでもパッチさせようとしていて(笑)。
松尾:その一方で、挿さるところにしか挿せないようになってる。
福田:エディットのしやすさを考えてそうしました。OASYSのオプション音源LAC(Legacy Analog Collection)で実現していたマルチ出力も、そこからフィードバックを受けて追加しました。
佐藤:KORG Legacy CollectionのMS-20を元に開発したOASYS用のMS-20があって。OASYSのMS-20はすごいですよ。これは触らないとだめですね(笑)。パッチケーブルの色も変わりますしね。
※OASYSはオプション音源としてMS-20EXが搭載可能だった。
福田:MS-20EXのパッチ部にはアナログミキサーが2系統ついてるんですよ。細かいコダワリが詰まっています。
●SoundCloudのデモとライブ演奏
松尾:単にオーディオファイルだけじゃなくて、セッティングデータまでダウンロードして持って来れるじゃないですか。両方できるというコンセプトはまだないですよね。iShredとかGuitarStudioとか一部で実装しているiPhoneアプリはあるんですけど、曲として成立するレベルではないし、iPhone以外では聴くことができない。
佐野:iMS-20のガワはキャッチーなんで刺さっている人は多いんですけど、SoundCloudの部分も同じくらいキャッチーだというのがなかなか伝わっていないんじゃないかと。「あ、ダウンロードできるんだ。アップロードできるんだ」くらいな。
実際に自分でやってみると、シンセからネットに直結してる感じがあるんで。開発中は、アップロードしたいがために強引に音を作る、みたいなことがありましたね。本当にネットの出始めのころってそういう感覚があったじゃないですか。ネットをやりたいためにコンテンツを強引に作る、みたいな。そういうところがすごくいいなあ、未来がある、って。
一般の人がiMS-20で普通に作った曲をブラウザで開いて普通に聴けて、だけど実は中にデータがいて、それをやりとりするって、なんか秘密結社っぽくありません?
松尾:そこを意識しないでできちゃう。
佐野:そうなんですよ。
松尾:MS-10のときって、マニュアルの後ろにある設定図にパッチなんかを手書きして残したりしてましたが、交換まではしなかった。DS-10ではデータの1対1の交換まではできた。でもその先はできなかった。楽器としてはすごくレガシーだけど、形態としてはすごく未来、という。
福田:そのギャップが面白いですよね。
佐藤:SoundCloud部分は、佐野さんからけっこうアドバイスをいただいて、エンジニアのモチベーションが上がりましたね。
松尾:最初からSoundCloud一択だったんですか?
福田:自分たちでサーバを用意したりとかいろいろな選択肢があったんですが、おもしろいところといっしょに組みたいというのがあって。
佐藤:これは僕らも彼らも初めてのことじゃないですか。開発してもらわなければいけないことも多いし、簡単に実現できた機能ではないですよね。
福田:SoundCloudの担当してくれた方がすごく熱心で助かりました。
佐藤:SoundCloudでiMS-20グループも立ち上げてくれてるんですよ。
松尾:SoundCloudはもともとパネルやシーケンス、パッチのデータなんかを置ける仕組みだったんですか?
福田:それは今回、このために開発しました。オーディオとデータを別々に送るんです。実際に自分で初めて使ってみるまではこんなに面白くなるとは思ってなかった(笑)。
佐藤:僕は完全に思ってましたよ(笑)
岡宮:前に飲んでるときから佐藤さんおっしゃってましたよね。
松尾:そのデータにPCのDAWからアクセスできるようにはならないんですか? シーケンスデータを読み込んで、とか。
佐藤:その世界で完結する、という制限も楽しいじゃないですか。
松尾:データはMIDIじゃないんですか?
福田:MIDIじゃなく独自フォーマットです。
中島:中の解像度はもっと細かくなっています。
福田:解像度は128ではなくパラメーターによって異なりますが、およそ1000段階です。だからこそ、このアナログのなめらかな感じが出せるんです。
松尾:iELECTRIBEのときは違ったんですか? 進化した?
福田:もともとKORG Legacy Collectionがそういう仕様でした。あれもMIDIでコントロールすると128段階なんですけど、オートメーションなどを使うと、DAW上ではその細かさを使えるという仕組みなんです。それをそのまま持ち込みました。
中島:アナログは解像度がほぼ無限じゃないですか。それを再現するために解像度をかなり上げてるんですね。
松尾:ところで、SoundCloudにあがっているデモ曲がびっくりするくらいのクォリティでびっくりしてるんですが。
佐野:今回のデモソングももうやりすぎってくらいできてきて、止めようがなくなっちゃって(笑)。あれ、曲担当の皆さんにせーの、で作ってもらったんですよ。途中、戦いみたいになってましたね。すごい楽しかったですよ。
佐藤:あのデータ集めるのもSoundCloud使っていたじゃないですか。あれがまたよかったな、と。
佐野:人のがアップされていると気になる。それであおられて(笑)
佐藤:デモソングを制作したメンバー間でお互いの曲を聴くことができる。おかげで全曲すばらしい曲になりました。
佐野:ちょっと密度が濃すぎるな、と思ったんですけどね。すごい凝りようなんで。面食らっちゃわないかな、とか思ったり。
岡宮:脅しが効き過ぎみたいな(笑)
佐野:それをやめてくれ、と言うわけにもいかずで(笑)
松尾:動画への書き出しと投稿もできるといいんですけどね。
佐野:それだとYouTubeになっちゃいますね。(笑)
佐藤:動画機能を組み込んじゃうとシンセがまるごとなくなってドラムマシンだけになっちゃいますよ(笑)
松尾:でもこれ、すごくライブ映えしますよね。
佐野:ちょっと悔しいですね。DS-10を作っている自分らからすると(笑) こっちのほうが演奏するとかっこいいですよ。
松尾:DS-10ってライブで使えるようになるとは最初、想像できなかったですよ。
佐野:ぼくもそうですよ。ただ、ステージで使っている方を見てると、ちょっと派手さに欠けるな、みたいな。なにも知らない人にとっては何をやっているのかぜんぜん分からない。でも、iMS-20はやってる感があるんでいいなあ、と。普通にカメラで後ろから押さえても見えるじゃないですか。
松尾:Denkitribeさんみたいに、譜面台に乗せて逆から弾く、というのもいいですよね。
佐野:Denkiさん慣れてますからねえ。
●オリジナルMS-20、SQ-10開発者、三枝氏からのコメント
佐藤:iMS-20について、オリジナルのMS-20とSQ-10の開発者である三枝(三枝文夫取締役)からコメントをもらってるんですよ。
「初めて触れたときに驚いた。30年前にやりたかったことが全て実現されていた。当時、1977年11月か12月、ブロックダイアグラムを描きながらリバーブを基本ブロックに入れられたらと思っていました。パッチのメモリーよりも願望としてははるかに上位でした。でも当時の技術では夢のまた夢。iMS-20で実現できてうれしいです。一方、楽器との1対1の関係、つまり、買って、うれしくて、枕元に置いておける楽器になれるのだろうか、ということも思いました。iMS-20が物としての楽器導入のきっかけになってくれたらうれしいですね」
佐野:いいですねー。
松尾:どのあたりから見せていたんですか?
佐藤:オリジナルのSQ-10を作ったのは三枝だったので、ステップ数を12から16にするときに許可をもらいに行って(笑)
松尾:当時の開発者がいらっしゃるということ自体がすごいですよね。
佐藤:おそるおそる聞いてみたんですが、「んー、いいんじゃないの」という軽いノリでOKもらいまして。ステップ数が12である理由はどういうとこですかね、というとこから入っていって……。三枝もiPadユーザーで、新しいものが大好きなんです。新しいデバイスが出たら、いの一番に買いますからね。実際に渡したのはファイナルくらい、最後の段階です。
松尾:MSシリーズは30年続いたわけですからね。これが30年続くのか、という。世代を超えても続いて行くという電子楽器は、これが初めてじゃないですか? 形態を変えながら。
佐藤:何回も同じもので商売するってことですか?(笑)。
松尾:もちろん、いい意味で(笑)。
●楽器プラットフォームとしてのiPadについて
松尾:iPadを楽器プラットフォームとして見た場合、どうですか? iELECTRIBEのときと状況は変わりましたか?
福田:CoreMIDIやCoreAudioが搭載されて、楽器としての可能性がより高まっていますよね。
佐藤:iPadの使い方のひとつとして、楽器という分野が確立してきていると感じます。そこをまだまだ伸ばして行きたいですね。
佐野:iPhoneだと楽器として考えたとき狭すぎる。でもiPadが出て、ここまでスタンダードになったタッチパネルのアイテムというのは初めてなので、そういう意味では楽器として使うことを考えると可能性はありますよね。
松尾:今回はベースとしてMS-20というのがあったわけですけど、iPadを使ったまったく新しい楽器とか考えられますかね?
佐野:まったく新しい、ではないですが、iM01とか? 買ってくれるんだったら今日にでもプロジェクトスタートで(笑) でも、DSでできたからすぐにiPadに入れられるか、というと難しいですよね。特にインタフェースの部分で。
松尾:M01のカオスパッドのコードプレイはいいですよね。
佐野:KAOSSはまだいいのですが、他の画面をどう昇華していくか。やはり指の太さがね……それに比べるとDSのスタイラスペンは、異常に細いんで。全体的に予想以上にでかいものになりますね、きっと。
佐藤:iPadでピアノロールってかなり難しくないですか?
松尾:難しいですね。かなりインタフェースを変えないと。押さえるポイントで移動にするのか長さ変更にするのか。
佐野:いろいろ考えないと。指は太いので、指の後ろは見えないじゃないですか。
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オリジナルのMS-20が発売されたのが1978年。2004年にこれをソフトシンセ化したKORG Legacy Collectionが登場。
名機そっくりのコントローラが付いたソフトシンセ〜 「KORG Legacy Collection」の魅力とは? 〜
さらにそれをオプションとしてハードウェアシンセに組み込み可能にしたOASYSがリリースされたのが2005年。
コルグのOASYS製品情報
2008年にはMS-10をコンセプトにニンテンドーDS用にリメイクしたKORG DS-10が、ニンテンドーDSiに最適化された強化版のKORG DS-10 PLUSが2009年に。
KORG DS-10強化版「DS-10 PLUS」 DSiなら2倍のパワフルシンセに
そして、2010年4月。MS-10/20で使われたアナログシンセサイザーの回路をハードウェアとして再現した手乗りアナログンセ「monotron」が発売。11月にはiPad版のiMS-20が登場。モバイルになり、クラウドを従え、2004年リリースのUSBフィジカルコントローラもつながるようになった。初代から5回も転生を繰り返したMS-20/10。次はどのような形態に変わるのか。そしてiPadでコルグが何をやるのか、興味は尽きない。【松尾公也,ITmedia】
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